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求めるのは変化に向き合う自己実現と成長可能な人

アルフレッサ株式会社
コーポレート本部 人事部
人材採用グループ長
小野 英俊 氏
営業職であるMSを中心に事業所勤務の管理薬剤師や本支店の事務職、さらには急速に進展する医療DXの担い手など、モノと情報を届ける医薬品卸業の現場で活躍する人材の多様化が進んでいます。「どんな仕事でも決して一人で取り組むものではありません」。アルフレッサ人材採用グループ長の小野英俊氏は、いずれの職種であっても様々な人との関わりの中で成り立つ卸業には、他者との連携能力に長けた人材が求められていると強調します。ベテランの営業職から採用グループへの異動は、自身にとってはゼロからのスタートとなりました。自らもキャリアアップを目指し、採用担当者として必要と感じた資格取得にもチャレンジしました。それは、新たな職責における自信へとつながっています。
会話のキャッチボールできる人材を歓迎
医薬品卸業はこれまで、医薬品や診断薬、医療機器などの安定供給、すなわち「流通」を通じて医療や健康を下支えしてきました。当社は業界のリーディングカンパニーです。その一方、そうした基幹事業を軸にしながら、技術革新に伴う医療の高度化や医療人材の働き方改革などの一環で「医療DX」が本格的に進展してきました。医薬品卸事業で中心的な役割を担う、営業職であるMS(=マーケティング・スペシャリスト)のほか、医薬品の管理や情報提供を主業務とする薬剤師、さらには本社・支店勤務の事務職、そして医療DX分野の技術革新に関わるスタッフなど、現在の卸業には実に様々な職域で、多様性豊かな人材が活躍できるフィールドが用意されています。
直近の2024年4月には、新規事業開発や新利益獲得サービスの構築・流布を目的とした「ソリューション&イノベーション事業部」が発足しました。さらには、これからの成長分野である「再生医療産業」の拡大のほか、希少疾病薬やアルフレッサ専売品の獲得などスペシャリティ事業にも裾野を拡げています。チャレンジングな企業風土の中で、文系・理系を問わずMSからキャリアをスタートさせ、様々な分野で新たなスキルアップができるのが当社の強みと自負しています。
当社の企業理念は「すべての人にいきいきとした生活を創造し、お届けします」です。働く一人ひとりが、そうした目的意識をもって、医療に対して「安心」と「安全」、そして「誠実」を約束する。先にも触れたように医薬品卸業を取り巻く環境は大きく変化し、過去の延長線に縛られることなく変化に対応していかなければなりません。そのためには新しい発想が不可欠で、何よりも「自ら考えて行動し、自己実現、自己成長を目指す人」が必要となってきます。
具体的には「地域医療に貢献できる“人財”」として、5つの人物像を描いています。まずは「信念を持つ」こと、ぶれない考えで一本筋が通っていることです。「しなやか」で柔軟性があり、臨機応変な対応ができることも大切です。「探究心が強く」隠れたニーズである本質を追求できること、そして「真摯に人に向き合い」真面目に誠実に対応できること、最後にたとえ前例がなくても戦略的に、具体的に物事を考えられる人です。
私自身、年間を通じて300人から400人の方々と面談をする機会があります。そこで大切にしていることは、これまでの経験を踏まえ自身の考え方をきっちりと伝えることができ、その考えを今後どのように活かしたいのかを明確に訴求できる人かどうか。そして、当社の考え方もしっかりと理解していただけるかどうか、という点です。そうした「会話のキャッチボール」ができる方を歓迎したいと思っています。
仕事は一人で取り組むものではありません。様々な部署で、多様性ある人材が互いに関わりながら業務を進めていく中で、置かれた状況を理解し、協力と連携を惜しまない人材が求められてきます。
卸における薬剤師業務の認知度向上課題
採用時に営業職のMSだから、薬剤師だからとかいった線引きはありません。採用にあたっての基準は先ほど申し上げた通りです。
薬剤師の採用は新卒よりもキャリア採用が多くなっています。薬学教育が6年制となって久しく、やはり新卒薬剤師は「臨床」への関心が高い。病院や保険薬局への就職志向が顕著です。それどころか、ほとんどの薬学生は医薬品卸業に薬剤師の活躍の場があることさえ知らないのが現状です。
当社には全国に171カ所の支店があり、医薬品医療機器等法によって事業所ごとに管理薬剤師を配置することが定められています。管理薬剤師の主な役割としては医薬品の品質と適正な販売管理のほか、GDP(医薬品の適正流通の基準)ガイドライン関連の業務やメーカーMRとの情報交換がありますが、支店のMSや医療機関の方からの問い合わせに対応する、いわゆるDI活動も重要な業務の一つです。
当社には現在、220人ほどの薬剤師が在籍しています。つまり、事業所以外の現場でも活躍している薬剤師が50人ほどいる計算になります。支店長を含むMSはじめ、経営企画部門や人材採用グループ、さらには法務部門と、医薬品卸業の中で薬剤師が活躍できない部署はありません。ただ薬学生の認知が低い。大学での就職説明会や面談等を通じて、医薬品卸業における薬剤師の役割と存在感をどれだけ高めることができるかは、人材採用部門の課題と考えています。
採用現場への転籍はゼロからの再スタート
アルフレッサが発足したのは2004年のことで、私は2001年にその前身企業に入社しました。神奈川県で都合4支店のエリアで営業経験を重ね、この間支店長としての経験も積みました。2019年10月にコーポレート本部人事部に異動となるまで、20年近く営業の第一線にいたことになります。そんな私がなぜ人事なのかは上層部の判断なのでよく分かりませんが(笑)、2021年10月からスタートした新人事制度の導入準備のための異動だったようです。
初めての本社勤務で初めての事務職、もちろん人事も初めてです。営業職から人事に異動になるケースも珍しく、正直言って、転職したような気分でした。分からないことばかりで、まさにゼロからの再スタートとなりました。
部内の採用グループに異動したのが2022年4月のことです。MSに限らず薬剤師や本社事務部門、中途採用者に契約社員と、採用全般を担うグループへの転籍でしたが、そこでは営業職時代の経験が役に立ちました。また、対顧客といった第一線の現状は理解できていたので、それを就職希望者との面談の中で活かし、より具体的な就業イメージへとつなげることができたのではないかと思っています。さらには本社と現場の橋渡しを意識し、本支店間のつなぎ役のような役割を果たすことができれば、と考えていました。
部下や後輩の中には社会保険労務士の国家資格を有するプロフェショナルな部員もいます。そうしたことが刺激となり、私自身も「キャリアコンサルタント」の国家資格を取得し業務に活かしています。
キャリアコンサルタントとは文字通りキャリアコンサルティングを行う専門家のことで、2016年4月から国家資格となってます。制度を所轄する厚生労働省によると、「労働者の職業の選択、職業生活設計または職業能力の開発および向上に関する相談に応じ、助言および指導を行うこと」をキャリアコンサルティングと定義付けています。
私が資格を取得したのは採用グループに異動する直前の2022年3月です。すでに部内には複数の資格取得者がいて、社員面談や評価面談のほか、就職希望者の面接などの場面で資格が活かせるのではないかとの思いからチャレンジしました。
ちょうどコロナ禍の頃で、オンライン講座の受講を余儀なくされるなど対面で学ぶ機会が少なかったのが心残りですが、就職希望者や採用イベントへの参加者から、就職活動時の考えを聞き出したり、把握したりする場面で役立っています。
現在、人事部には6名のキャリアコンサルタントが在籍し、このうち4名が採用グループに所属しています。キャリアコンサルタントは企業やハローワークなど幅広い分野で活躍していますが、私自身、社員との面談や部下との関わりにおいて、資格取得で学んだことが大いに参考になっています。先ほども申し上げたように、私は営業から人事部に異動し、まさに自己流で面談をしていたこともありました。資格取得で様々な学びの機会を得ることができたと思っています。
重要なのはアルフレッサを選んだ理由の理解
医薬品卸業は独自の製品を販売しているわけでもなく、他社と差別化するのがとても難しい業種です。それだけに求職者には、卸業という自社の魅力を的確に伝えると同時に、当社にどのような期待や希望をもって入社したいと思っているのか、面接等を通じて互いに理解を深めるよう努めています。
他社の採用活動を参考にするのではなく、むしろ入社された方が、なぜアルフレッサを選んでくれたのかが重要なポイントです。選択の意図を把握しながら、私たちの採用活動に寄せる思いが応募者に的確に届いているのかどうか、常に確認するよう心掛けています。
編集部からのポイント
今回は、薬局業界と最も近い‘‘他職種”として医薬品卸のアルフレッサさんを取材しました。薬局採用においても共通している悩みとしては、求人していること自体を周知できていないという点です。医薬品卸における薬剤師の採用は認知度が低いので、まずは知ってもらうという努力が企業にも採用担当者にも必要ですね。そして、一番のポイントは求人を知ってもらったあとに「魅力を知ってもらう」という所です。今回取材させていただいた小野さまはキャリアコンサルタントの資格も取得しており、卸で働く薬剤師にどんな魅力があるのか、今後のステップアップはどういうキャリアがあるのか、面接の段階から具体的にイメージできるように話すことができます。求める人材を獲得するために様々な手段を講じることは多くの企業でも実施していますが、担当者自身もスキルを磨き、求める人材に響くような人物になることが大切ですね。