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富澤崇の「薬剤師採用成功への道」第3回新卒採用計画の立て方(後編)
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新卒採用計画の立て方(後編)
編集部からのコメント
2021年4月の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」が発表した薬剤師の需給推計は、当時の業界をざわつかせたニュースでした。あれから数年が経ち、需給推計によれば数字の上では供給過剰になっています。しかし、現場では薬剤師が余っているなんてことは1ミリも感じられないほど不足している状態です。
いった何が起こっているのか?という原因追及はさておき、薬剤師採用が至上命題となっている今、効果的な採用方法や計画の立て方を抑えておく必要があります。そこで本コラムでは、元大手調剤薬局チェ-ンの人事部長を経て人事コンサルティング会社を創業した富澤崇先生に「薬剤師の新卒採用・中途採用を成功させる勘所について教えていただきます。
第3回は、「新卒採用計画の立て方(後編)」です。
みなさんこんにちは!
パラレル(とっちらかった)キャリア薬剤師の富澤です。薬剤師、大学教員、大手チェーン薬局の人材開発部門の責任者、そしてコンサルティング会社の経営者をしています。薬剤師や薬学生のキャリアに全方位的に関わっています。年々人材採用の難易度が上がっていますよね。採用側の大変さもよくわかります。でも、残念ながら正しい手順で採用活動をできていない薬局・ドラッグストア・病院も多いなぁと感じています。まだまだ改善の余地はありますので、ぜひ本コラムでアップデートしてください。
コンタクトポイントの設計
学生とどこで接点をもち、自社を知ってもらうか、その手段を設計します。
認知拡大のためのメディア選択
広く母集団を形成するためには、複数のメディアを組み合わせて活用することが重要です。
・ナビサイト(求人広告サイト):人材紹介会社や新卒採用支援会社が運営する、いわゆるナビサイト(求人広告サイト)。
掲載内容のボリュームや種類よって費用が変動する。
・メールやLINEの配信:ナビサイトの登録学生に自社情報をメールやLINEで配信するサービス。
地域や学年などの条件で配信先学生を絞り込むことができる。
ナビサイトを使わずに独自のルートで集めた学生に対して配信するサービスもある。
・合説会場でのチラシ配布:合同企業説明会の会場内に自社の求人広告の紙媒体(チラシ)を設置してもらう、
または会場のスタッフによって参加学生に配布してもらうサービス。
・郵送DM:ナビサイトの登録学生に自社の求人広告の紙媒体(チラシ)を郵送するサービス。
・大学への求人情報提供:「求人受付NAVI」や「キャリタスUC」のような求人情報を大学に配信するサービス。
こうしたWebサービスの利用が増えており、紙媒体の求人情報を受け付ける大学が減っている。
・自社ホームページ:自社ホームページ内に採用情報を掲載する。上記各種メディアを経由して、自社ホームページへの流入を増やす。
・SNS:Instagram、X、TikTok、YouTubeなどにコンテンツを投稿する。またはこれらSNSに求人広告を掲載する。
ポイント
- 病院:日本病院薬剤師会や都道府県病院薬剤師のホームページの求人コーナーに掲載するのが効果的です。
- 中小・地方の薬局・ドラッグストア:認知度の低い中小や地方の企業は、メディア制作においてインパクトのあるビジュアルやコンテンツが必要です。
学生との接触機会の創出
学生と対面またはオンラインで直接接触する機会を設けます。
・学内説明会:大学が主催する学内での合同説明会。対面またはオンラインで開催。求人企業の紹介動画の配信もある。
採用実績がないと招待されにくいが、キャリアセンターへの積極的なアプローチが重要。
・合同企業説明会:人材紹介会社や新卒採用支援会社、国家試験予備校などが主催する合同説明会。対面またはオンラインで開催。求人企業の紹介動画の配信もある。年間通して複数回、全国の会場で開催されている。
・人材紹介:薬学生の就活支援を行っている会社からの人材紹介。新卒者の人材紹介は大学から否定的な見方をされていたが、近年その傾向が柔和してきている。
・学術イベント:薬剤師や薬学部教員を対象とした学会の学術イベントへの参加。求人企業・病院のブース出展を招聘するイベントもある。
・実務実習:2.5ヶ月の薬局実務実習。本来、実務実習は採用の機会として利用するべきではないが、自社へのよい印象を持ってもらうことで間接的に採用に繋がる可能性が高まる。
ポイント
- 病院:薬局やドラッグストアに比べ、合同企業説明会の出展料が安く設定されていることがあります。
自社理解を促進する機会
・インターンシップ:学生が企業・病院で一定期間就業体験を行うプログラム。自施設での対面型、オンライン型、オンデマンドによる動画配信など多様化している。
・自社説明会:自施設内で行われる説明会。自施設の見学を兼ねることが多いが、オンラインでの説明会を行い、別途職場見学を設けることもある。
・選考:採否を見極めるためだけでなく、より自社を知ってもらうための説明会を兼ねた選考。
・リクルーターによるフォロー:母集団形成段階から内定承諾までのプロセスを自社のリクルーターが伴走。
採用プロセスの動線案内、職場見学のエスコート、質疑応答などが主な役割。
・カジュアル面談・食事会:接触母集団とのカジュアルな形での面談や食事会。
・内定者懇談会:内定を出した学生を対象とした懇親イベントや食事会。
ポイント
- 病院:インターンシップや説明会を施設都合のスケジュールではなく、なるべく学生の都合に合わせて開催できるといいでしょう。
- 中小・地方の薬局・ドラッグストア:採用情報の露出が少なく、役員クラスが応対することが多いため、若手従業員がリクルーターとして学生と密にやり取りするといいでしょう。
富澤さん

認知拡大のためのマスマーケティングには多額の費用がかかるため、社内での予算獲得が肝。むやみやたらにメディアを使うのではなく、費用対効果を勘案して選択することと次年度にその効果判定をすることが大事。
アクションプランの作成
採用戦略が決まったら、最後に具体的なアクションプランを作成します。このプランは、採用活動を円滑に進め、目標を達成するための詳細なスケジュールとタスクの一覧です。いつ、どこで、誰が、誰に、何を、どう実施するかを明確にします。
全体スケジュールの策定
いわゆるロードマップです。下記の例のように4月から3月までのカレンダーを用意し、学生の動きと採用活動をプロットします。場当たり的な対応にならないよう、年間スケジュールを常に確認し、早めの準備を心がけます。
タスクの細分化
ードマップだけでは、実際のタスクを表現しきれませんので、ToDoリストやガントチャートと呼ばれるタスク管理のためのリストを作成します。下記の例では、タスクを大小に2分類し、担当者と成果物、日単位のカレンダーという構成で作成されています。タスクを実行する日をグレーで示しています。このようにあらかじめ想定されるタスクと工数を設定し、計画的に実行します。特に複数人で採用活動を行う場合、タスクリストがあると抜け漏れや遅延を防ぐことができます。
PDCAサイクルの導入
採用活動は一度立てた計画をそのまま進めるのではなく、計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act)のサイクルを回すことで、柔軟に最適化していく必要があります。
ロードマップやタスクリストはPlanに当たります。Doは採用活動そのものです。第2回(前編)でお伝えした「採用活動の棚卸」がCheckに当たります。Checkを怠りがちですので注意してください。Checkの結果をActに生かします。
成果指標(KPI)の設定
採用活動の進捗を測るための指標を設定します。KPI(Key Performance Indicator)とは、「重要業績評価指標」のことです。採用目標数を達成するための採用プロセスにおける各種評価指標として、接触母集団数、インターンシップや自社説明会への動員数、選考数などを設定します。
下記の例のような「KPIツリー」を作成し、指標ごとに目標値を定めます。定期的に数値をモニタリングし、達成できていない指標を強化するなど、採用活動に反映させます。
富澤さん

就活の早期化・長期化によって、採用担当者は“走りながら考える”ことが常態化しがち。どこかで腰を据えて計画策定に時間を取ることが結果的に近道!
3回にわたり「薬剤師採用成功への道」をお送りしました。新卒・中途に限らず、そして薬剤師だけに限らず人材採用は経営の重要課題である一方、離職防止や生産性向上によって、新規採用に頼らない組織作りも大事です。コラムの内容に対するご質問や人材確保のご相談があればお気軽にお問い合わせください。

大手チェーン薬局にて人事・教育・採用部門の責任者、人事制度改革、ブランディング、新規事業創出プロジェクトなどに従事。
2017年株式会社ツールポックス創業、北里大学客員准教授兼務。