1. ホーム
  2. 薬剤師 人事向け記事一覧
  3. 2025~2026年以降施行予定の労務関連法改正まとめ|薬局・ドラッグストアの勤務に影響するポイントを解説
人事・労務

2025~2026年以降施行予定の労務関連法改正まとめ|薬局・ドラッグストアの勤務に影響するポイントを解説

この記事をシェア

URLをコピー

2025年から2026年以降、多くの労務関連の法改正が予定・議論されており、薬局やドラッグストアの現場で働く薬剤師の方にとっては、日々の働き方や休暇取得、職場環境づくりに影響する内容が多くあります。

本記事では、2025年10月施行の改正育児・介護休業法をはじめ、2026年以降に予定・検討されている労務関連の改正内容を解説します。

 

2025〜2026年に改正が予定・検討されている労務関連の法律

2025〜2026年には以下の労務に関係する法改正が予定・検討されています。

 

育児介護休業法

・施行時期:2025年10月

・主な内容:

1:3歳から小学校就学前までの措置義務化
2:個別周知・意向確認
3:仕事と育児の両立に関する個別の意見聴取と配慮義務

 

労働安全衛生法

・施行時期:2026年以降施行予定

・主な内容:50人未満のストレスチェック義務化

 

労働施策総合推進法

・施行時期:2026年以降施行予定

・主な内容:カスハラ対策の義務化

 

労働基準法

・施行時期:2026年改正に向けて議論中

・主な内容:

1:連続勤務の上限規制(連続14日以上の勤務の禁止)

2:法定休日の特定義務

3:年次有給休暇取得時の賃金算定における通常賃金方式の原則化

4:法定労働時間週44時間の特例措置の廃止

 

なお、実際の施行日や内容は今後の政府の指針によって変更される可能性があります。

 

2025年10月改正 育児介護休業法

2025年10月から育児介護休業法の改正により、企業にはこれまで以上に細かな両立支援が求められるようになります。

対象となる年齢の拡大や制度利用の個別周知・意向確認の義務化など、現場での運用方法を見直す必要が出てくるでしょう。主な改正内容は以下のとおりです。

 

・3歳から小学校就学前までの措置義務化
・措置の個別周知・意向確認
・仕事と育児の両立に関する個別の意見聴取と配慮義務

 

参考:育児・介護休業法令和6年(2024年)改正内容の解説_厚生労働省

 

3歳から小学校就学前までの措置義務化

これまで企業に義務付けられてきた短時間勤務や始業・終業時刻の繰り下げなどの両立支援措置は、主に子どもが3歳になるまでが対象でした。
2025年10月からは、3歳から小学校就学前までの子を養育する従業員に関して、事業主が以下5つの中から講ずべき措置を2つ以上選択して講ずる必要があります。

・始業時刻等の変更
・テレワーク等(10日以上/月)
・保育施設の設置運営等
・就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
・短時間勤務制度(1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む)

 

3歳から小学校就学前までの子を養育する従業員は、上記の中で事業主が講じた2つ以上の措置の中から1つを選択して利用することができます。

 

措置の個別周知・意向確認

3歳に満たない子を養育する従業員に対しては、子が3歳になるまでに3歳から小学校就学前まで利用できる措置内容を個別に周知し、利用の意向を確認することが義務付けられます。また、個別周知の際には所定外労働の免除(残業免除)や時間外労働・深夜業の制限に関する制度なども周知が必要です。
周知方法は本人が希望した場合を除き、面談(オンライン可)や書面で個別に伝えなければなりません。本人が希望した場合はメールやFAXで周知することが認められています。

 

仕事と育児の両立に関する個別の意見聴取と配慮義務

従業員本人または配偶者の妊娠・出産の申出があったときや、3歳に満たない子を養育する従業員に対しては、個別の意見聴取と配慮も求められるようになります。具体的には以下の内容を個別に聴取しなければなりません。

 

・勤務時間帯(始業及び終業の時刻)
・勤務地(就業の場所)
・両立支援制度等の利用期間
・仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)

 

子育て中の従業員からの意見や要望を聴き取り、可能な範囲で勤務内容やシフトに反映させることが求められます。薬局やドラックストアについては、薬剤師全員の希望をかなえるのは難しい場面もありますが、制度利用を前提にした人員配置や業務分担の見直しなど行い、できる限り希望に沿った働き方を実現できるよう配慮しましょう。

 

2026年以降の施行が予定されている法改正

2026年以降も職場環境に影響する法改正が施行される見込みです。いずれも従業員の安全と健康や働きやすさを守るための内容であり、早めに準備を進めることでスムーズな対応が可能になります。ここでは、その中でも薬局・ドラックストアに関係性が深い「ストレスチェック義務化」と「カスハラ対策の義務化」について解説します。

 

ストレスチェック義務化

現在、常時使用する従業員が50人以上の事業場に義務付けられているストレスチェック制度が、今後は50人未満の事業所にも拡大されます。
ストレスチェック制度は、従業員が自らのストレス状況を把握し、必要に応じて医師による面接指導や職場環境の改善につなげることを目的としたものです。これまで従業員50人未満の企業は努力義務とされていましたが、長時間労働や人員不足によるメンタル不調の増加を背景に、すべての従業員が平等に受けられる体制を整えるため、義務化が進められることになりました。

法改正は2025年5月に成立・公布されており、施行日は「公布後3年以内(最長2028年5月)」とされています。

 

参考:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について(報告)_厚生労働省

 

カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化

企業に対し、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策を義務化する法改正が成立(2025年6月公布)しています。施行日は公布から1年6ヶ月以内とされており、2026年中に施行される見込みです。
カスハラとは、顧客や取引先からの悪質なクレームや暴言、過剰な要求など、労働者の人格や尊厳を侵害する行為を指します。近年、接客業やサービス業を中心に被害事例が増加し、従業員のメンタルヘルス悪化や離職の一因となっていることから、国としても防止策の法制化が進められました。

具体的な内容としては、カスハラ対策の基本方針の策定・周知やカスハラ相談窓口の設置、対応マニュアルの策定などが事業主に求められる予定です。

 

参考:令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について_厚生労働省

 

2026年以降の労働基準法改正に向けて議論されている内容

2026年以降も労働基準法の改正に向けて議論が進められています。
ここでは、2025年1月8日に公表された厚生労働省検討会の報告書をもとに、今後改正に向けて議論されている法改正案を紹介します。

参考:労働基準関係法制研究会報告書_厚生労働省

 

連続勤務の上限規制(連続14日以上の勤務の禁止)

現行制度では、4週4日の休日が確保されていれば違法とはならず、変形休日制を使えば最大24日連続勤務が可能です。しかし、精神疾患の労災認定基準が「連続2週間勤務」であることから、連続14日以上の勤務を禁止する案が出ています。
シフト勤務で働く職場では繁忙期や人員不足で連続勤務が発生しやすいため、改正されれば必ず2週間に2日の休日を確保するシフト運用が必要になります。

薬局の多くは、基本的には余剰人員を抱えない(抱えることができない)方針だと思いますが、この法律改正により、薬剤師の人員確保を考える必要があるところも出てくるでしょう。

 

法定休日の特定義務

現行法では法定休日を事前に特定する義務はなく、事後的に判断されるケースが多くあります。
今後は、「〇曜日を法定休日とする」など具体的に法定休日を特定し、就業規則や勤務表に明記することが義務付けられる方向です。また、法定休日の振替手続きや期限も規定化される見込みです。

 

年次有給休暇取得時の賃金算定における通常賃金方式の原則化

現行法では、年休取得時の賃金算定は「通常の賃金」「平均賃金」「健康保険法の標準報酬日額」の3方式から選べますが、選択肢によっては従業員の不利になる場合があります。
これを是正するため、所定労働時間に対する通常賃金での支払いを原則とする案が出ています。

 

法定労働時間週44時間の特例措置の廃止

週44時間特例措置とは、特定の業種・規模の事業場において、法定労働時間を週40時間から44時間に延長できる制度です。薬局やドラックストアにおいても適用が可能な制度となります。
しかし、厚生労働省の調査では現行法で認められている企業のうち、87.2%の企業が未利用だったことから、廃止が検討されています。改正された場合は、すべての事業所で週40時間上限への対応が必要です。

ただし、この特例に依存して運営している企業もあることから、慎重に議論が進められています。

 

参考:労働時間法制の具体的課題について_厚生労働省

 

まとめ

2025年から2026年にかけて、薬局やドラッグストアの勤務環境に直結する労務関連の法改正が相次ぎます。2025年10月施行の育児介護休業法改正では、両立支援措置の対象年齢が小学校就学前まで拡大され、個別周知・意向確認、意見聴取・配慮など企業に対して義務化される措置が加えられます。
さらに2026年以降は、ストレスチェックの義務化やカスタマーハラスメント対策の施行が予定されており、職場の安全・健康管理が一層求められるでしょう。

また、労働基準法改正に向けて、連続勤務上限規制や法定休日の特定義務化、有休時の通常賃金支払い原則化、週44時間特例の廃止などが議論中です。薬局やドラックストアにおいても直接影響する改正が予定されているため、最新情報を確認し、早めの準備を進めることが大切です。

 

きた社労士事務所代表 北 光太郎
社会保険労務士。企業の労務担当として10年間労務業務に従事。開業後は、企業の給与計算や労働社会保険手続きのサポートに加え、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。読者にわかりやすく信頼できる情報を伝えるとともに、Webメディアの専門性と信頼性向上を支援している。

この記事をシェア

URLをコピー