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薬剤師の人材紹介と人材派遣の違い

薬剤師の募集を始める時、人材紹介や人材派遣の利用というのは多くの薬局や病院などの事業所において、選択肢の一つとして考えるはずです。では人材紹介と人材派遣、それぞれの違いはなんでしょうか?この記事ではそれらの違いと薬剤師の採用担当者が知るべきポイントについて解説します。
この記事のポイント
- 人材紹介や人材派遣を行うには厚生労働省による許可が必要。許可がない人材紹介会社は違法。
(人材紹介=有料職業紹介事業許可 人材派遣=労働者派遣事業許可) - 人材紹介は求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんすること
- 人材派遣とは労働者派遣事業許可の免許をもった会社が派遣労働者を求人を募集している企業に派遣するサービス
人材紹介は求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんすること
人材紹介とはいわゆる職業紹介のことで、「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんすること」を指します。人材紹介というのは誰でもできるわけではありません。厚生労働省が発行する無料職業紹介事業の許可または有料職業紹介事業の許可をもった会社のみができる事業です。
無料職業紹介事業の許可はハローワークや大学のキャリアセンターが有している許可で、職業紹介に関し、営利を目的とするか否かにかかわらず、 いかなる名義でも手数料又は報酬等の対価を受けないで行う職業紹介事業のことを指します。
有料職業紹介事業というのは、営利を目的とするか否かにかかわらず、職業紹介に関し、手数料又は報酬等の対価を受けて行う職業紹介事業を指します。エニーキャリア(株)では有料職業紹介事業の許可を取得しており、薬剤師の人材紹介事業であるファーマキャリアにおいて、人材紹介事業を行っています。
ファーマキャリアは有料職業紹介事業なので、求職者と求人者の雇用関係が成立した場合は、仲介手数料が発生するという仕組みです。

コメント

有料職業紹介事業を行うためには、資本金が500万円以上必要です。また、オフィスの要件もあります。場所や広さ、構造等様々です。誰でもどこでもできる事業ではないんですよ!
人材派遣は派遣先に派遣労働者を派遣するサービス
人材派遣とは労働者派遣事業のことを指します。派遣労働者は派遣元の会社と雇用契約を結び、派遣会社の職員*1となります。そして派遣先で就業するという働き方です。給与の支払いや福利厚生等は雇用契約を結んでいる派遣元の派遣会社が行いますが、業務指示に関しては派遣先の会社が行います。
労働者派遣法における「労働者派遣」の定義:
自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、 かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、 当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

*1:一般派遣(登録型派遣)の場合、労働者は条件に合う仕事で無事就労となった場合は派遣元である派遣会社と雇用契約を結びますが、雇用契約は就業期間中のみとなります。一方、無期雇用派遣の場合は労働者は派遣会社の正社員であるため、就業先があってもなくても雇用契約が存在します。
派遣には一番多いケースである「登録型派遣」、いずれは派遣先の社員になることができる「紹介予定派遣」、「常用型派遣」の3つの働き方がありますが、薬剤師の採用担当者の方が知っておいた方が良いのは、「登録型派遣」と「紹介予定派遣」でしょう。
ある特定の期間のみ働く、薬剤師を募集したい場合は登録型派遣を利用した方がよいですし、正社員を採用したいものの採用後のミスマッチが怖いといった場合は紹介予定派遣を利用するのが良いでしょう。
登録型派遣
登録型派遣は派遣労働者と派遣元である派遣会社の間で雇用契約が結ばれます。派遣労働者と派遣会社との雇用関係は、就業先が決まった時点で発生し、派遣契約の結ばれている期間のみ成立するため、派遣先の契約が終了となった場合は派遣元との雇用契約がなくなります。
紹介予定派遣
紹介予定派遣は、派遣先に直接雇用されることを前提に一定期間派遣スタッフとして就業し、派遣スタッフと派遣先企業の双方に合意があれば、派遣契約期間終了後に正社員等の直接雇用に切り替わります。
常用型派遣
常用型派遣とは、派遣元が常時雇用する派遣労働者を派遣先に派遣することです。派遣期間が終了しても派遣元である派遣会社と派遣労働者の雇用関係は継続します。
※エニーキャリア(株)では労働者派遣事業の免許を持っています。
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人材派遣事業を行うには基準資産額2000万円(基準資産額=資産総額-負債総額)が必要です。事業所の広さや立地等の条件もあります!
人材派遣の要件が人材紹介よりも厳しい理由
人材派遣の要件が人材紹介よりも厳しいのは、人材派遣は原則禁止であったことに由来します。人材派遣は遡ること江戸時代から始まりましたが、強制労働や中間業者の搾取という問題があり、1947年に交付された職業安定法により「労働者供給事業」として原則禁止となりました。その後、1966年に業務請負という形で一部の企業で解禁されたのち、1985年に労働者派遣法が成立。原則禁止という中で一部の職業のみ派遣が解禁されました。現在は原則自由という形になっておりますが、派遣自体が禁止とされる職業も存在しています。
応募数や募集タイミングに応じてそれぞれ使い分ける
人材紹介と人材派遣にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
人材紹介のメリットとデメリット
人材紹介を利用するメリットですが、人材紹介会社は、面接の日程調整や内定までの事業所側と求職者間のフォロー、入社前の書類作成のフォローなどをしてくれるため、採用以外の仕事もしていて忙しい方にとっては非常に便利なサービスだと言えます。
また、応募者確保という点でもメリットは大きいでしょう。自社のホームページでの募集や求人媒体での募集の場合は、よほどブランド力のある薬局や病院、ドラッグストアでないと、応募者は集まりません。人材紹介会社には数万人単位で薬剤師の登録者がいるため*2、一定数の応募者が確保できます。
その他にも内定を出すまで、料金が一切かからないというのも魅力です。内定が出るまでは何人面接しても人材紹介手数料はかかりませんし、利用開始に伴う登録料等ももちろんかかりません。
人材紹介会社のデメリットですが、人材紹介会社を利用して内定を出すと紹介手数料がかかる点が言えます。紹介手数料はだいたい内定を出した薬剤師さんの年収の30~35%程度です。年収500万円の場合は、紹介手数料が150万円~175万円となります。
一見、高額に見えるかもしれませんが、多くの薬局や病院では「自身で求人を募集しても薬剤師の応募がこない」という問題を抱えているケースがあることから、「薬剤師を採用できず薬局が営業できない」、「病院で患者さんの薬を用意できない」、「病棟業務ができない」という問題の解決として考えると大した金額ではないと思う事業所が多いように思います。
*2人材紹介会社の規模によって異なります。
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総合人材系を取り扱う人材紹介会社は、基本的には人材紹介手数料が35%以上かかります。対して、薬剤師をはじめとする医療系をメインに扱う人材紹介会社は25%~30%と比較的安価となっています。
人材派遣のメリットとデメリット
人材派遣を使うメリットとしては、好きな期間だけ薬剤師を雇うことができるという点です。正社員の急な退職に伴い、1ヵ月だけ薬剤師を募集するといったスポット利用ができるのが魅力でしょう。また、万一、派遣された薬剤師と相性が合わない場合は、契約期間さえ終了すれば別の派遣薬剤師を派遣してもらうことができるのも良い点だと言えます。
一方で、人材派遣のデメリットは時給単価が高いことです。派遣会社の取り分(マージン)は派遣薬剤師の時給の35%以上かかり、薬剤師が少ない地域ほど高額になってきます。
例えば、直接雇用のパートだと時給2,500円ですむのに対し、派遣薬剤師の場合は時給4,000円弱となります。派遣期間が短期間で済むのであれば問題ないかもしれませんが、長期に渡ればわたるほど、ボディーブローのようにじわじわと経営にひびいてくるのではないでしょうか。
他の業種と比べると派遣薬剤師のマージン率は高い傾向にあり、その理由としては何年も同じ職場で働く派遣薬剤師はあまりいないことから、新たに派遣薬剤師を探す必要があるためだと言われています。派遣元自体が、広告宣伝費をかけて派遣薬剤師を募集するため、費用面はもちろん、人的リソースがかかるためマージン率を高くする必要があるわけです。
一方で、マージンの中には派遣薬剤師の社会保険料の会社負担分や有給休暇の費用(派遣薬剤師が有給休暇を取得する場合は、派遣元がその費用を負担する)も入っているため、単純な”中抜き費用”というわけではないということも、頭に入れる必要があります。
その他のデメリットとしては、派遣薬剤師というのは会社への帰属意識があまり期待できないため、業務効率の低下等の問題が起こる可能性があることが挙げられます。組織一丸となって目標を達成するといったことは、なかなか難しいのではないでしょうか。
※マージン金額に関しては派遣会社によって異なります。
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病院においては基本的に、派遣薬剤師を雇うことは禁止されていますが、紹介予定派遣や産休・育休、介護休業の代替要員であれば問題ありません。
人材紹介も人材派遣も、利用するタイミングを見極めるだけで、良い意味で経営に大きなインパクトを与えます。それぞれのメリット、デメリットを見比べて今の募集状況においては使うべきかそうではないないか検討してみてください。